嘘は溺愛のはじまり


待って待って!

演技って分かってても、そんな風に言われると、ちょっと……いやすごく恥ずかしい!

本当に思ってることじゃないって分かってても……、分かってても、無理!!


顔を真っ赤にして伊吹さんの言葉を阻止した私を、伊吹さんは「え? なぜ?」と不思議そうに見下ろしている。


「えっと、なぜ、って、あの……っ」


照れすぎて慌てふためく私を見た伊吹さんのお母様は、「ふふっ」と嬉しそうに微笑んで、今度は私に尋ねた。


「結麻さんは? 伊吹のどんなところに惹かれたのかしら」

「私は……」


同じ質問でも、伊吹さんと私では、全く違う。

伊吹さんは私のことなんて本当は何とも思っていない。

でも私は、そうじゃない。

伊吹さんは嘘を吐かなければいけなかったけど……私が伊吹さんに対してどう思っているかを、偽る必要はない。

だから私の本当の気持ちを言えば良い――。


「あの、私は、一目惚れだったんです。初めて見た時から、伊吹さんはとても素敵で……」


見た目だけなんかじゃなくて、伊吹さんの素敵なところは、本当にたくさんある。

それこそ、語ればとても長くなりそうなほどに。