思ったよりもスムーズに商談が進み、社長である父のはからいで、一足先に日本へ帰国することになった。
まる一日近く早く帰国できたことになる。
「……専務」
「なんだ」
「……顔、にやけてんぞ」
「……うるさい」
日本へ向かう飛行機の中、隣に座る笹原が、秘書らしからぬ言葉遣いで俺をからかう。
「土産もいっぱい買ったし、なあ?」
「だから、うるさい」
「はいはい。ああそうだ、専務。社長から伝言をお預かりしております」
笹原を秘書につけて二年だ、こいつが急に秘書モードに変わることにももう慣れた。
ひと睨みしながら「なんだ」と答えると、笹原は秘書スマイルで恭しく頭を下げた。
「社長夫人が専務のお宅に泊まられているそうです。『邪魔をしてすまない』とおっしゃっておられました」
「……」
母が……。
結麻さんはすっかり母に気に入られてしまったようだな。
きっと突然訪ねてきたに違いない。
母が結麻さんを困らせていなければ良いけれど……。
そして、ふと、思いつく。
……“邪魔”だなんて、とんでもない。
むしろ、大歓迎ですよ、母上。
「専務。顔がニヤけてますよ?」
「……うるさい」
「やらしーこと考えてただろ?」
「だから、うるさい」
「うわー。若月さんに言っちゃおー」
「笹原」
俺が睨むと、笹原は両手を少し挙げて「はいはい、静かにしますよ」と呆れたように笑いながら答えた。
日本まで、あともう少しだ。
俺は座席に深く沈み込み、目を閉じた――。
まる一日近く早く帰国できたことになる。
「……専務」
「なんだ」
「……顔、にやけてんぞ」
「……うるさい」
日本へ向かう飛行機の中、隣に座る笹原が、秘書らしからぬ言葉遣いで俺をからかう。
「土産もいっぱい買ったし、なあ?」
「だから、うるさい」
「はいはい。ああそうだ、専務。社長から伝言をお預かりしております」
笹原を秘書につけて二年だ、こいつが急に秘書モードに変わることにももう慣れた。
ひと睨みしながら「なんだ」と答えると、笹原は秘書スマイルで恭しく頭を下げた。
「社長夫人が専務のお宅に泊まられているそうです。『邪魔をしてすまない』とおっしゃっておられました」
「……」
母が……。
結麻さんはすっかり母に気に入られてしまったようだな。
きっと突然訪ねてきたに違いない。
母が結麻さんを困らせていなければ良いけれど……。
そして、ふと、思いつく。
……“邪魔”だなんて、とんでもない。
むしろ、大歓迎ですよ、母上。
「専務。顔がニヤけてますよ?」
「……うるさい」
「やらしーこと考えてただろ?」
「だから、うるさい」
「うわー。若月さんに言っちゃおー」
「笹原」
俺が睨むと、笹原は両手を少し挙げて「はいはい、静かにしますよ」と呆れたように笑いながら答えた。
日本まで、あともう少しだ。
俺は座席に深く沈み込み、目を閉じた――。



