嘘は溺愛のはじまり

どうにかして彼女の心を自分の方に向けたくて、次の手を打つ。

恋人同士の演技を身につけるため、と称して、デートに誘った。


「取引先からテーマパークのチケットをもらったから」と、もっともらしい嘘を吐いて。


いや、全てが嘘なわけではない。

チケットをもらったのは、本当だ。

取引先からもらった、と言うところも。


ただ、その出所は『叔父の会社の取引先』で、『叔父からチケットを渡された』というのが真相だ。

どうやって彼女を繋ぎ止めるかと言うことばかり気にかけている俺を見かねて、叔父が「結麻さんをちゃんとデートに誘いなさい」と言ってチケットをくれたのだ。


叔父は今では自他共に認めるかなりの愛妻家だが、元はあの人もプレイボーイだったから、そう言う所は叔父の方が心得ている。


デート当日は、とても楽しく時間が過ぎていった。

手を繋いで歩くのを恥ずかしがる結麻さんはとても可愛くて、何度も抱き締めそうになるのを我慢しなければならなかった。


日が暮れると、ここはイルミネーションで煌めく。

それを観覧車から見るカップルが多いらしい。


二人きりのゴンドラの中、眼下には色とりどりの光が広がっている。


最初は「わぁ、本当に綺麗ですね」と、眼下に広がる美しい光景に感心しきりだった彼女が、いつしか無言になり、次第に肩をふるわせ始めたのが分かった。


「結麻さん……?」


薄暗い中でも、彼女が泣いていることは明らかだった。


声を掛けると、「あまりにも綺麗だから……」と答えたけれど、とてもそんな涙には見えない。