私には外食三昧なんて出来るはずもないので、このキッチンをお借りして自炊するしかない。

鍋や炊飯器は今まで使っていたものをそのまま持って来た。

特に買い揃えなければならないものはないんだけど……篠宮さんは何か欲しい物でもあるのかな?


外出する支度をして、私は篠宮さんに連れられてマンションを出た――。



伊吹さんの運転する車でショッピングモールへとやって来た私たち。

日曜日の夕方のショッピングモールは家族連れやカップルなど、意外と人が多い。


篠宮さんと私はキッチンツールなどを売っているお店へと足を踏み入れた。


「いずれ買い揃えようとは思っていたんだけどね」


篠宮さんはそう言いながら、鍋やフライパンを熱心に見ている。


「若月さんは、どんな鍋だと使いやすいですか?」

「私、ですか? そうですね、普段使いなら軽くてお手入れのしやすいのが良いかなーと思います」

「そうなんですね」

「重厚な鍋も本当はすごく憧れるんですけど、ひとり暮らしだと使わなくて」

「じゃあこう言う鍋は使いにくいんだ?」

「んー、そう言うわけではないですよ、煮込み料理を作るのにはとても向いてますし。私にはお値段的に買えなかっただけで……」