嘘は溺愛のはじまり


しばらくすると美味しそうな料理が目の前に差し出され、楓さんに「毒味をお願いします」と言われる。


「毒味だなんて……。美味しそうです。いただきます」

「死んでも文句言いっこナシだからね~」

「ええ? ふふっ、死にませんよ」


ふたりして笑いながら、私は魚介のマリネを口に含む。


「わ。美味しいっ」


反射的に顔を上げて楓さんを見ると、満足そうに笑っていた。


「結麻ちゃんは反応が良いから、作りがいがあるなぁ」

「だって、本当に美味しいんですもん」


楓さんは謙遜して、「まぁ、そう言ってもらえるのは嬉しいけどね」と苦笑い。

本当なんだけどな、本当に美味しいんだけどな、と、モグモグしながら思う。


――そのとき。

バタン、と大きな音を立てて、カフェの扉が開いた。


振り返るとそこには、伊吹さんが息を切らせて立っていて…………。


「いぶき、さん、どうして……」

「楓から連絡もらった」

「え……? あの、」


どう言うこと……?

楓さんと伊吹さんは、携帯の連絡先を知っているような知り合い、ってこと?

じゃあ、さっき楓さんにかかってきた電話は、伊吹さんから……?