私が着ているジャケットのボタンに手をかける。
首を左右に振って拒絶の意思を示すが、いやらしく笑うばかりで全く聞き入れてもらえそうにないどころか、乱暴な手つきでジャケットのボタンを外し、今度はブラウスのボタンに手をかけた。
しかしジャケットとは違い、ブラウスのそれは小さくて繊細な飾りボタンだ。
男の人の太い指でそれを外すのは容易でないらしい。
ああ、このブラウスで良かった、と思ったのも束の間――イライラした唸り声が頭上から聞こえ、ブチブチッと音を立てて引きちぎられたボタンがどこかへはじけ飛んだ。
「……っ!?」
ボタンが床を転がって行き、見えなくなる。
綴じ合わせる手立てを無くしたブラウスはもう私の胸元を隠してはくれず、下着が完全に顔を覗かせていた。
「ふぅん……、僕を誘ってくるぐらいだから、もっといやらしい感じの下着かと思ったけど。まぁこう言う清楚っぽいのも、逆にそそるけど、ねぇ?」
羞恥と屈辱で、思わず涙がじわりと滲む。
誘ってなんか、いない……!!
そんなことするわけがない……!!
声は、喉の奥でつかえて、出てこなかった。
私は相変わらずどこまでも役立たずで、意気地無しで、どうしようもなくて、本当に情けなくなる。



