――1ヶ月という時間は、思ったよりもあっという間に過ぎてしまうらしい。

印刷所での最後の勤務を終え、引っ越しの準備もすっかり整った。


空きが出るだろうと言われていたマンションの一室は結局、現在入居中の人が3月末まで入居したいと言うことらしく、私が入れるとしたらそれ以降になるのだそうだ。

つまり、私が入居できるのは数ヶ月も先。

今のアパートはもうすぐ出なければいけないし、どうしようか思案していたところで篠宮さんからとんでもない提案を受けてしまった……。



「部屋が余っているので、下の階が入居できる状態になるまでの仮住まいに使って下さっても結構ですよ?」



篠宮さんのその言葉を聞いた時の私は、一体どれぐらい間抜けな顔をしていただろうか。

しばらく呆けた後ようやく、“もし篠宮さんの提案を飲むと一緒に住むことになる”のだと気がつく。

そこで一気に顔に熱が集中し、私は分かりやすすぎるほどうろたえてしまった。


い、一緒に……!?

無理! むりムリ無理……!!


言葉を失ったまま首をブンブンと左右に振ると、篠宮さんに「一緒に住むのは嫌ですか……?」と少し悲しそうに眉尻を下げて問われた。


「いえっ、嫌じゃないんです!」

「でしたら、なぜ……?」

「えええっ、だって、一緒、一緒に……っ」


その先を言葉に出来ず、私は赤面したまま俯いた。

だって、一緒に住むなんて……っ。