そんな私の想像をよそに、篠宮さんは「ああ、家賃ですか」と、大したことなさそうな声で返す。


「リフォーム無しで入っていただけるなら、割り引けるそうです。もちろん清掃してから入って頂きますのでご安心下さい」

「は、い、もちろんリフォームなんて、必要ないですけど……」

「ただ、まだ入居中で交渉している最中なので、少しだけお待ち頂くことになるかも知れません」

「はい、それは多分大丈夫です」


少しの間だけなら、どこか格安で宿泊できるところを探せば良い。

お給料が保証されているなら少しの出費は仕方がないよね。

それに、これを逃せばこんな大きな会社で働ける機会なんて、私にはきっと一生ないに違いない。

色々考えた末、篠宮さんの紹介してくれた仕事を引き受けさせて頂くことにした。


この先、あんなとんでもない事になってしまうとは、夢にも思わずに――――。