「……あ、の」

「今日は、同じ部屋で寝ようか」

「……え、え!?」

「主寝室のベッドは広いから、端と端で寝れば大丈夫」

「えっと、でも、」

「結麻さんの許可なしに、襲ったりもしないって約束します」

「えええ? えっと……?」

「……本当は抱き締めて眠りたいけど、それはなるべく我慢するから」

「あの……っ」

「じゃあ結麻さん、先に主寝室の方のバスルーム、使って良いですよ」


ほらほら、と手を取ったまま私をソファから立ち上がらせる。

えっ、待って待って、私、まだ心の準備が……!

同じベッドで寝るってことだよね!?

……いやいや、無理でしょ!?

いくら伊吹さんのベッドが広いって言っても、同じベッド、ですよ!?

想像しただけでみるみる心拍が上がるし、顔も熱くなる。


慌てふためく私を相も変わらぬ美しい笑顔で見つめる伊吹さんに、私は思わずクラクラしてしまった。

耳元で伊吹さんに「ほら、着替え、取っておいで」と追い打ちを掛けるように囁き落とされ、私は自室へと着替えを取りにふらりと足を動かした。

よろよろと歩きながら、これで良いのかどうか自問する。


伊吹さんのベッドで、一緒に、寝る……?


ひとりパニックになり、頭をブンブンと左右に振る。

ちがう、ちがう、一緒に寝るんじゃなくて、同じベッドで……、あぁ、いや、一緒か、えええっと、…………とりあえず、気絶しそう……。


のろのろと着替えを用意して覚束ない足取りでリビングに戻ると、伊吹さんは私が主寝室のバスルームへ向かうのを微笑みながら見送ってくれた……。