「あの、それは私が、お誘いしました……お話ししていて楽しかったし、それに……」
私もひとりだと寂しかったので、……とは言いづらくて、言葉を切って俯いた。
昨日は少し酔っていたせいで上手く嘘がつけなかったから、伊吹さんにはもうばれてしまっているかも知れないけど……。
「結麻さんが母と仲良くなってくれるのは、俺も嬉しいよ」
「……はい」
頷くと、また優しく抱き締められた……。
――お母様がお風呂に入ると、伊吹さんは私を手招きして隣に座るように促した。
少し間をあけて座ったのに、伊吹さんが身を寄せるように座り直したことによって、私と伊吹さんとの間の隙間は消えてしまっている。
更には、手をキュッと絡めるように繋ぎ合わされて……。
「ねぇ、結麻さん」
「は、い」
「俺たちは母の前では恋人同士ですよね?」
「はい」
「しかも、同棲している」
「はい」
「同棲しているカップルが別々の部屋で眠るというのは、おかしいと思うんだけど。どう?」
えっと、どう、って聞かれても、返答に困ります……。
困り果てて伊吹さんを窺い見ると、いつも通りの美しい顔で、やっぱりいつも通り優しく微笑んでいた。



