「大丈夫?」

顔を真っ青にするイヅナたちに、男性たちが近付いて手を差し伸べる。気が付けば三人とも腰が抜けて座り込んでいたのだ。レオナードとヴィンセントは手を取って立ち上がったものの、イヅナだけは動けなかった。

「おい」

東洋人の女性がイヅナの手を掴む。その手をイヅナは「やめて!!」と言い、振り払っていた。

「どうして、どうして、あんなひどい殺した方ができるんですか!?こんなの酷すぎる!!いくら怪物だからってあんなの、可哀想だわ!」

辺りにはまだ鬼の亡骸が転がっている。イヅナが耐え切れずに泣くと、胸ぐらを東洋人の女性に掴まれた。

「誰が助けてやったと思っている?あたしたちが助けに来なければ、今頃お前たちはあそこで死んでいる人間と同じ運命だったんだぞ!それを「酷いこと」だと?「可哀想」だと?笑わせるな!」

東洋人の女性は怒りに満ちていた。しかし、「ツヤちゃん、その手を放してあげて」と悲しげな目をするロリータ服の女性に言われて渋々手を放す。ロリータ服の女性、そして男性は悲しげな目をしていた。そして、イヅナは男性に言われる。

「僕たちは、アレス騎士団のメンバーなんだ。アレス騎士団は今みたいに人間を喰う暴力的な妖を倒すためにできている。もし、この現状を変えたいなら、もうすぐ行われる入団テストに来て。今を変えたいなら、動くしか道はないよ」

その言葉に、イヅナは迷うことなく頷く。もしも共存できたなら、そう思ってしまったからだ。