漢字(かんじ)「それでは、1月期のクラス委員長は、根と中木で、やることで、いいか?」50代過ぎた担任が、クラスの全員に呼びかけた。

クラスのひとかたまりは、笑っていた。そう、じつは、根達夫をクラス委員長にしてから、困らせようと、企んだ張本人たちだ。よくいるイジメっ子である。

中木ミオは、頭がクラス一番の成績優秀な生徒。また、真面目を信条として、生きる生徒。

「断っちゃいなよ」

隣の仲良しである、秦野乃花は、心配そうに、根に言った。
「ノノ、心配いらない」根は、そう、野々花に、告げた。

「よろしくお願いします」とミオは、根に挨拶した。

根は、黙って席をたった。

「なに、アイツ」ミオは、言った。


「根」先生から、呼び止められた。
「じつは、テストの点数を、計算する時間がない。電卓が早い生徒を、集めてきてくれないか」

根は、わかりましたといって、クラスへ向かった。

「だれか、電卓の早いヤツ、いないか」根は、その場にいる生徒に、呼びかけた。

しかし、誰も、返事しない。いや、無視してる。

根は、やっぱりなと、一人悪態をついた。


アタシ、行くよと、野々花が、助け舟を出した。

「頼む」根は、野々花の存在に、安堵した。

「あたしも」ミオも名乗り上げた。しかし、根は、断った。

「俺と野々花で十分だ」そう言って、根は、その場から、離れた。

「あたし、嫌われているのかな?」ミオはそう、つぶやいた。


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「野々花、彼ってどんな性格してるの?」ミオは、野々花に相談した。
「なに、惚れたの、根に」野々花が、冷やかした。

「彼、変わってるね」そして、
「あたし、あんな男みたら、イライラするの」とミオ

「そうなの」と野々花

「イライラするのは、なんでだろう」と野々花が、ミオに尋ねた。

「それは」と言いかけたミオ。

「なになに」興味津々といった野々花

「アタシに冷たいから」全部言えて、少しスッキリしたミオ

「そうなんだ、ミオは彼が私に冷たいと、思っているのね」野々花が反芻した。

「ミオ」
「今夜、カラオケ行こーか」と野々花

「あたし、そういうところ、苦手かな」ミオは、そう言って、立ち去ろうとした。

「俺も混ぜてくれ」なんと、根が目の前にいた。

ミオは、顔が赤くなるのを感じた。それに、ほたっている。

「野々花、いいだろ。」と根は、言った。

「でしゃばるんじゃないわよ、この変態」野々花は、ズバズバ物を言う。

「だって、俺と仲良くなりたいんだろう、中木は」

「そんなんじゃないわ」まわりに、ひびく声で、ミオは否定した。

「怒った顔も、かわいいねえ」と余裕の根。

「根、ミオを困らせてどうするの。そういうところ、昔から変わらないね」と野々歌。

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カラオケの帰り道、「ムーンライトANGEL'S」という看板が、あった。

歌が流れていた、あの歌の名前は、確か、上白石萌音の、「白い泥」だと、根は思った。

そう言えば、こいつも、真面目なところは、萌音そっくりだと、思って笑った。

「なに、1人笑いしてんのよ、気持ち悪い」とミオが、怒った。

「おまえ、本当に、シャイだな」ますます図に乗る根。

まわりには、浴衣を着た女性たちが、集まってきた。

あっそうか、今日は、花火大会が、あるんだったなと根は、思い出した。

「野々花、疲れているだろ、ここで、帰れ」と野々花に、ささやいた。

そう言われた野々花は、

「手を出したら、明日死刑」と忠告した。

「ミオ、わたし、帰りは、こっちだから」と言って、去っていった。

ミオは、ドキドキしてきた。何を話せばいいの。

二人、川辺を、散策した。たまに、魚が跳ねていた。ポチャ、ポチャ。

根も、緊張していた。よくしらないから、居心地が悪い。

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バンバン。衝撃波が、ふたりの身体を、突き抜けた。
「打上花火」が、空を駆け抜けた。

「わっ」とおどろいたミオは、根に抱きついた。

「おばけじゃないから、驚くな」根は、落ち着いていた。

「あったかい…」ミオは、根にもたれかかり、そう思った。

「走るか、俺の手を、離すんじゃないぞ」根は、月明かりに照らされた土手を、

ミオとともに、下り坂を、駆け抜けて、わざと転んだ。二人は、抱き合ったまま、

転げ落ち、そして、止まった。

「泥だらけ」ミオは、そう言った。

「俺もだ」と根。
ふたりは、ゲラゲラと、笑った。理由なんて、何もないのに。

「なぜだろうな?」と根
「えっ」とミオ

「性格は、お互い真逆なのに、俺は、今お前に惹かれてる」
「それは、わからないけど、私は、はじめから、あなたを見つめてる」

ドンドンドゥルルル、連続花火が、空を舞った。それは、二人を祝福しているかのようだった。