「……鈴本くん、大人っぽいね」



白の薄手のニットと黒のパンツの上から秋らしい深緑のチェック柄のチェスターコートを羽織っていて、シンプルだけど大人っぽい。普通に大学生くらいに見える。



「えっ」

「え?何その反応」

「……いや、恥ずかしいからあんま見ないで」


鈴本くんは私の視線から逃れるように顔を逸らして、私の顔の前に手を広げて邪魔をする。その指の隙間から見えた耳は微かに赤く色づいているように見えた。


……そんな顔、はじめて見たかも。


鈴本くんならこんなことくらい言われ慣れてそうなのに意外だな。でもこうやって照れてるの見るとすこし可愛いかも、なんて。


そう思っていたことが顔に出てしまっていたのか、鈴本くんは拗ねたように「…早く行こ」と言って先に歩き始める。追いかけるように歩き出せば、チュールスカートの裾がはためいた。



「お店どこにあるの?」

「信号の先にある通りの入り組んだとこ。たぶん店の場所がわかりにくいから人がそんな来ないんだと思う」

「へー」


じゃあ場所がわかりやすいように外観とかの写真撮っといた方がいいかな。まあ私のSNSアカウントで宣伝になるとは思えないけど。せいぜい学校の友達くらいにしか広められないから少し役不足なような。