『くる』
私をそう呼ぶ人は決まってる。苗字の来栖くるすから取ってつけられたあだ名を呼ぶのは、ただ1人しかいない。
振り向いたその瞬間、綺麗な顔が視界を埋め尽くして、思わず距離を取ろうと仰け反ってしまう。
「えっ、すすすすもとくん!?なんで、え、」
「うん、とりあえず落ち着こう。俺、鈴本だからね。すすもとじゃない」
ほら、もう泣き止んで。と長い指先で私の目尻に溜まる雫を掬いとる。
……どうして鈴本くんがここにいるんだろう。っていうかいつからいたんだろうか。
もしかして私と保科くんが話してる時からいたのかな。じーっと鈴本くんを見つめて考え込む私に、鈴本くんは不思議そうに首を傾げる。



