正直、寂しいなと思う。高校生の頃は学校に行けば当たり前のように顔を合わせていて、挨拶は決まって『おはよう』だったのに、今ではその挨拶は『久しぶり』になった。


大人になっていくうえで、それぞれの生活に変化が起きることは仕方の無いことなのに、今のまま立ち止まっていたい自分がいる。


このまま時間が止まってくれたらいいのになあ。そんなことを考えながら、ボスンと横にいる渚の肩にもたれかかってみれば、渚は「ん?」と笑いながら頭を撫でてくれた。



「どうしたの。高校時代に戻りたくなっちゃった?」

「……うん。あの頃は毎日会えて幸せだったな、と思って」

「今は幸せじゃないのー?」

「幸せだよ。でもやっぱり会えないと、寂しい」



こんな言い方じゃ、会う頻度を増やしてって言ってるように思われるかな。急に自分が駄々っ子のように思えてきて、恥ずかしくなる。

冷静になって、もたれかかっていた体勢を戻そうとするけれど、それを察知した渚の手が腰にまわってきて、尚更距離が近くなった。



「じゃあ今日はずっとくっついてよっか」



そうやって悪戯っぽく笑われて、胸が高鳴る。と同時に、ずるいと思った。