「欲張りになっていいよ。私、渚が思ってるより何倍も渚のこと好きだから」
言い終わると次の瞬間には今度は背中じゃなくて、正面からつよく抱きしめられた。抱きしめられただけでこんなに安心するのも、渚だけだ。
「……俺、ずっと自分を制御してたんだ。キスしてしまえば歯止めがきかなくなって、真咲のこと大事にしたいのに傷つけちゃったらどうしようって」
「渚は傷つけないよ」
「わかんないよ、そんなの」
「わかるよ。だって渚が優しいの、誰よりも私がいちばん知ってる」
だって優しくなかったら、そうやって自分の欲望を押し殺すことなんてしない。だから伝わるように、抱きしめ返している腕にあらん限りの力を込めた。
そうすれば、頬を寄せている渚の胸元から心音が大きく伝わってくる。
「……ほんとに、いいの?」
「いいよ」
一切の躊躇いもなく、頷いた。