フヘンテキロマネスク

「渚?どうしたの?」

「……ん、なんかどんどん好きになっていって困るなぁって」

「困るの?」

「どんどん欲深くなっていく自分がいやなの。束縛したいわけじゃないのに、……真咲が他の男と話してるだけですんごいモヤモヤする。さっきの男も、スキーのインストラクターにすらそんなこと思ってた」



途中で話すのを躊躇う様子を見せながらも、渚はちゃんと最後まで私に言ってくれた。それがただの八つ当たりなんかじゃないってことは考えなくたってすぐにわかった。


私たちは、もう言葉の大切さを理解している。

まだなかなか実行に移せないときもあるけれど。



「自分がこんなに欲深い男だなんて思ってなかったよ。最初はただ隣にいられるだけで幸せだって思えたのにな」



眉を下げて目を伏せる渚は、もしかすると知らないのかもしれない。私だって、どんどん欲張りになっているんだって。



「いいじゃん、欲張りになったって。……だって私、最近ね、ずっと渚とキスしたいなって、おもってた。私も欲張りになっていってるよ」



やっぱりまだ、素直になるのは照れくさいけど。
でももう日に日に膨れ上がっていく気持ちを抑え込むのは到底無理だから。



――――毎日、好きが増していく。


愛に際限がないのなら、きっと幸せにだって際限はない。


それなら思う存分欲張りになって、思う存分、うんと幸せになってやろう。もちろん、ふたりで。