「……真咲、ほんとにどうしたの?なんかあるなら言って?」

「な、なんでもないよ」

「なんでもないならそんな反応しないじゃん。そんなに言いにくいこと?」



不服さ半分、悲しさ半分の顔を見て、私がそんな顔をさせているのだと思うと途端にいたたまれなくなる。



「……言いにくいとかじゃないけど、面倒くさって思われるかも」

「思わないよ。そうやって隠される方が辛い。真咲もわかってるでしょ?」


……そうだ。もう取り繕ったりしないで、ちゃんと言葉にしようって決めてたのに。また同じことを繰り返そうとしていた。


わかってはいるけれど、どうしたってやっぱり本心を曝すのは勇気がいるわけで。



「……な、んか、いつもと違う匂いが、」


絞り出した声は、迷子のように震えて、言葉がかじかむ。



「え?匂い?」


きょとんとしている渚は心当たりがないのか首を傾げている。あくまでも本当にわかっていないみたいで、わざとらしくはなかった。