「う、さむっ」


季節は冬。昇降口を出た瞬間肌に触れた凍てつくような冷たい空気に、無意識に情けない声がこぼれ出た。



「あれ、真咲今日マフラー忘れたの?」

「うん。朝寝坊しちゃって慌てて出てきたから」



隣を歩く渚の不思議そうな声に頷く。マフラーがないだけでこんなに違うなんて。今度からは忘れないように絶対気をつけよう。


そんな決意を密かに抱きながら、寒さに耐えるように縮こまっていれば、突然ふわっとバニラっぽい匂いがして。



「俺そんな寒くないから真咲が巻いといて」



私が口を挟む隙もないままに、ぐるぐると手際よく私の首にダークグレーのマフラーを巻きつけた。渚の体温がマフラーに残っていたのもあって、スースーしていた首元が一気にあったかくなる。