もしかしたら俺は、もう既に人生におけるすべての運を使い果たしてしまったのかもしれない。



「ねえ、渚、」


付き合ってからもうすぐ1ヶ月が経とうというのに、いまだに照れくさそうに名前を呼ぶ真咲が愛おしすぎて、そんなことをふいに考えてしまった。


長い間片想いしてきてようやく実ったけれど、片想い期間が長かっただけに、時々これは俺の都合のいい妄想なんじゃないかって思うときがある。


手を繋いでる感触がしっかりとあるから、現実だってちゃんとわかるけど。



「ん?どうしたの?」

「……いや、大したことじゃないけど、私が初めての彼女って言ってたの、それって本当なのかなって思って、」



冬の気配がする、放課後の帰り道。脈絡もなく真咲がそんなことを言うから、思わず首を傾げる。そんなの俺が嘘つくはずないのに。


不思議そうに真咲を見つめれば、真咲は気恥ずかしそうに目を逸らした。