鈴本くんにはもっと私よりいい人がいるってこともわかってるけど、そう思ったところでもう制御できるような、簡単に抑え込めるようなものでは既になくなっていた。



「……私、結構わがままだけどいいの?」

「え、待ってそれって……」

「……かなり面倒くさいけど、それでもいい?」

「…っ、いいよ。むしろ、たぶんうれしいと思う」



信じられないような顔で、でも泣きそうな顔になる鈴本くんを見て、ああ、なんか好きだなあって。ふいに思った。



「こんな私でもよかったら、おねがいします」



もう恋なんかいいやって思ってたから、まさかこんなに早く誰かをまた好きになるなんて思ってなかったけど、でも人を好きになるのに時間なんて関係ないのかもしれない。


縛っていたのは、ひとりで意地になっていた自分だった。


保科くんと別れてから、保科くんのことを考える暇も奪っていくくらいに鈴本くんが私を困惑させてきて、少しずつ鈴本くんのことを考える時間が増えていって、そうやって徐々に、いつのまにか膨らんでいた。もう隠しようがないくらいに。



「……っ、待って、ほんとにこれ夢じゃないよね……?」



そうやって今もまだ信じられないみたいに顔を手で覆う鈴本くんと、もう一度始めてみたいって、そう思った。