白の悪魔と黒の天使

「…灰原さん!」

聞こえないフリをしたい。

でも、この至近距離では、それは無理な話だ。

麗華は渋々そちらの方に振り返る。

「…ぁ、白崎さん、お疲れ様です。何か御用ですか?」

当たり障りのない言葉を発する。でも、その顔に笑顔はもちろんない。

あぁ、やっぱり笑顔は見れない。

右近は、少し寂しげな笑顔を浮かべ、麗華に近づく。

「もう、お帰りですか?」

右近の質問に黙って頷く。

「よかったら、これから食事でも?」
「…すみません。先程西園寺社長と会食をしてきたので、食事を済ませてしまって。また、今度、時間が合いましたら行きましょう。それでは失礼します」

会食があった事に安堵しつつ、行こうとする麗華。

が、やっぱり右近は行かせてくれそうにない。

今日は、もちろんいつも助けてくれる黒瀬はいない。ここは、キッパリ断らなくては。

「白崎さん」
「…俺を」

「…え?」
「…俺を嫌わないでください」

右近の言葉に目を見開く麗華。

「…ほとんど接点の無かった俺たちが、お互いの事を何も知らないのに、勝手に嫌わないでください」

右近の言葉に、麗華は言い返せない。右近の言う事は最もだから。

「俺がどんな人間なのか、知ってもらいたい。こうやって時間がある時、少しでもいいから、食事をしたり、他愛ない話をしたり…灰原さんと友達になりたいんです」

『友達』

その言葉に、言った右近もそれを聞いた麗華も驚いてしまった。