「お、なになに~、ホッチキス留め?」



私たちのいる机に寄って来た、あずりん先輩。


その手には、コーヒー牛乳。



コーヒー牛乳……?



廊下で話した時は持っていなかったそれにハッとして、フワリくんがいる旗係を見た。


床に座って鉛筆を握っているフワリくんの傍に、コーヒー牛乳なんてない。


つまり、あずりん先輩が飲むそれは……


フワリくんの、コーヒー牛乳……?



「、…」



動揺は、隠しきれない。


やっぱりあずりん先輩は、フワリくんの彼女なの?って。


やっぱり友達以上の関係なの?って。


コーヒー牛乳1つに掻き乱される私の心は、複雑を通り越して地の果てに突き落とされた気分……



「私も手伝うかな」

「ありがとう、ございます」



私に彼氏なんていない。


フワリくんの誤解を解きたい。


でも……

そんなの、フワリくんにしてみればどっちだっていいことだ。


私に彼氏がいたっていなくたって、フワリくんの中ではなんの問題もないこと。


知ってたけど。


分かってたけど。


私だけが気にして、私だけが落ち込んで、バカ、みたい……



そんな私に、追いうちを掛けるように聞こえた声。





「……あずさー。…これ、曲がってる?」





男子はみんな、佐伯って呼ぶ。


フワリくんは、男子でも、あずさ……