「私、彼氏……いません」

「ん?そーなん?今のは?」

「……ただの副リーダー、です」

「うん?」



逃げたかった。


フワリくんがいるのに、教室に戻りたくない。


でもヨッコに作業を押しつけるわけにもいかないし……


今日の曇り空よりも暗い心を連れたまま、泣きそうになりながら教室へと戻る。




戻ったら教壇から机にプリントを移動して、地道にホッチキス留めを進めているヨッコがいた。


菊地先輩に頼まれた仕事をウキウキしながら進めるヨッコは、どこからどう見ても浮かれてる。


だけど戻った私の顔を見て、浮かれている顔を引っ込めた。



「…なんかあった?」

「んーん、なんも、ない」

「でも、」

「早く全部やっちゃおう。あ、でも全部やると菊地先輩に手伝ってもらえなくなっちゃうか」

「……」



こんなとき、友達は私の代わりに悲しい顔をしてくれる。


ヨッコは今浮かれたい気分のはずなのに、私の気分を察して付き合ってくれる。


申し訳ないのと悲しいのとで、ヨッコの顔すらうまく見れない。


フワリくんは教室の後ろの方で床に座り込み、あぐらをかいて旗に絵を描いている。


チラチラと視界に入ってくるその光景に、今ばかりは目を閉じたくなる。