「ごめんね、これ体育祭のしおりなんだけど、このチームの人数分、全部ホッチキスで留めてほしいの」
「…、」
まずい、ヨッコが緊張のあまり固まってる!
「わ、わかりました!」
なにも答えないヨッコの代わりに、思わず大きな返事が出た。
「ほんとごめんね、佐伯たちに頼もうと思ったんだけど違うとこ手伝ってるみたいで」
「全然!あの、ひまなんで!」
「よかった、俺ら今からリーダーの集まり行かなきゃなんだけど、早く終わったら手伝うから」
「はい、気にせずどうぞごゆっくり!」
「ありがとう。じゃあよろしくね」
「…は、ぃ」
最後にようやく、ヨッコは小さな返事をした。
教壇に私たちを残し、歩き出す菊地兄弟。
の、弟の足がピタッと止まった。
「おい、早く行くぞ」
「わりぃ、先行ってて」
その声に、菊地先輩は1人で教室を出る。
私は教壇に置かれた膨大なプリントの山を見つめ、どうしたら効率よく作業が出来るかを考えた。
「高橋」
考える私の思考を止めた、その声。
「なに?」
見ると菊地弟が、ちょいちょいと私を手招きしている。
なに、せっかく考えてたのに。
ヨッコに取り合えず任せ、私は呼ばれるがまま菊地弟の元へと向かう。
「どうしたの?」
教室を出て廊下へ呼んだ菊地弟は、なんかむかつくニヤケ面。
なんなの、一体。
「お前、兄貴のこと好きだろ」
……。
はぁぁぁ????


