「見てたん、ですか」
「否定しろや、浮気……。」
「、…」
髪の毛から手を離したフワリくんが、窓の外を見る私とは逆向きに、窓にもたれて図書室を見る。
「大事にしてあげてって、言われました」
「ん?」
「山本先輩に、大原先輩はいい奴だから、大事にしてやってって」
「まじか。」
少し照れたみたいに、嬉しそうに笑うフワリくん。
「大原先輩の周り、……優しい人、ばっかり、」
「うん、」
あと数ヶ月。
フワリくんだけじゃない。
たくさんの先輩たちとも、あと数ヶ月で、お別れなんだ……
「……」
横顔が……見える。
隣で、図書室のどこかを、ただじっと、優しい顔で見ている横顔……
私の視線に気づいたのか、フワリくんの横顔が、こっちに向いた。
「ん?」
「イエ、…」
目が合うだけで、まだ、顔は火照るけど。
でも。
向けられる笑顔に抑えられない好きが溢れて……触れたく、なる。
「大原、先輩、」
手を……伸ばして触れたのは……
フワリくんの、白いシャツ。
触れたくて伸びた手は、白いシャツを、昨日みたいにぎゅっと握った。
私だって、大好きな人に、……ずっと触れていたいから……


