「前……1人で図書室、来た時。」
「…?」
「知らない、女子が、いて。」
「、…」
「俺が入って来たことに気付かないで、なんか、書いてたの。」
書いてたって、ノートかなにかかなって、思ったのに。
「ここ。」
「え、」
ここ、って指さしたのは、図書室に並ぶ、木の机の裏側。
その机の下にしゃがみ込むフワリくんが、おいでおいでと、私を呼ぶ。
だから私もコーヒー牛乳を持ったまま、そこにしゃがみ込んだ。
「なに書いてたのか、ずっと気になってて。」
2人で覗きこむ、机の下。
黒いボールペンで、ボソボソとした読みにくい字で、なにかが書いてある。
「見える?」
「ん、と……」
最初は読みにくかった字が、理解すると同時に文章になって私の目に飛び込んだ。
「『ずっと一緒にいようね、みつくん』」
見えたのは、誰かが書いた、ラブレター。
恋をしている女の子の、素直な気持ち。
誰かがここで……私と同じように、恋をしている。
その証拠が、ここにある。
「みつくん、誰だろ。」
「名前、……や、苗字かも?」
「どっちもあり、だな。」
笑いながら、フワリくんと机の下から出た。


