「ななちゃん?」
ぼーっと突っ立っていた私を、部屋から出て来たフワリくんが、呼んだ。
「もりりんの歌、すんげぇテンション、高ぇんだもん、」
「、…」
「聞いてるだけで、疲れちった。」
疲れたから部屋を抜け出してきたって、言い訳みたいに言うフワリくん。
「外、……涼みに、行かない、?」
「、…ハイ」
この幸せを、噛み締める。
今目の前にある、奇跡みたいな、幸せ。
だけど少しだけ……ほんの少しだけ、今、きくりんのことを考えてもいいのなら。
私は絶対に、忘れない。
たった1度の高校生活の中で、『好き』って言ってくれた、もう1人の男の子の存在を。
きくりんとの、思い出を。
いつか大人になったとき……絶対に、嬉しかった思い出だって、言い切れるから。
フワリくんとの幸せがどんなに積もっても、どんなに溢れても。
それでも私は絶対に、忘れないよ……


