「菊地先輩はいなかったねー…」
「え?あー……そう、だった?」
「いたかいないかなんて見てもないんでしょー」
「ごめん、あまりに怒涛の展開で……」
「や、うん。あの距離はそうなるよね。わかるよ」
フワリくんが目の前にいて、平静を保つだけで精一杯だったから。
だってあんなに目の前に、今までで1番近い距離にいた。
ダメだ、思い出しただけでなんかもう……
「ここに、この辺……こんな近くにね、フワリくんの白いシャツがね、!」
距離を思い出して必死にヨッコにアピール。
「いや私、隣にいたし知ってるから」
「…あうっ!そっか」
「明日は菊地先輩いるといいなー」
「そうだねぇ、フワリくんいるといいなぁ…」
「リーダーだから忙しいのかなぁ…」
「うん、旗係って、どんな旗作るんだろうねぇ…」
「会いたいなぁ……」
「会いたいねぇ……」
噛み合っていない会話なんてお構いなしで、お互いの頭の中はもう恋焦がれるあの人のことでいっぱい。
今日で私の顔、少しでも覚えてくれたかな。
それともまだ、大勢いる1年生の中の1人、かな。


