「ごめんね、大したものじゃなくて」

「イエ、」



そもそも食べ残しを食べてもらったのは私なのに、お礼を貰えることのほうが変。


だけどそんなことが気さくに出来るから、きっとこの人はモテるんだ。



「『ななちゃんはこのチョコパンが好きだよ』、って」

「ぇ…?」

「購買で教えてくれたの、大ちゃんが」

「、…」



出て来た名前に……胸の奥がぎゅっと掴まれる。



「あの日、美術室に行く大ちゃんに出くわして」



フワリくんが、赤いペンキを美術室に取りに行った……あの時の、話。



「高橋さんにチャーハン貰ったから、お礼になんか買ってあげようって大ちゃんに言ったら」

「、…」

「『ななちゃんはこのチョコパンが好きだよ』って、教えてくれた」

「、、、」



あの日もらったチョコパンは、体育祭の前、フワリくんに半分わけてもらったのと同じもの。


『そんなに好き?』って……好物だって思われたときの、あのチョコパン。


それ以前に、山本先輩に買ってもらったものとも一緒。



「、…」



全部……覚えててくれたんだ。


ちゃんと、記憶の中にいたんだ……