自販機でコーヒー牛乳を買ってもらって、学食の窓際の席にスー先輩と座った。


いつもフワリくんが飲んでいたコーヒー牛乳が、私の手の中にある。


それを見るだけで悲しくて……視界が滲んだ。



「……飲まない?」

「、…」



いつまでもストローを刺さない私を、スー先輩が心配そうに見つめる。



「イタダキ、……マス、」



ストローを咥えたら、甘くて苦い、そんな味。


だけどこんな状況になって、初めて気づいたことがある。


フワリくんがコーヒー牛乳を飲んでいるところを、最近は全然見ていない。


体育祭の頃は、よく飲んでた気がするけど。


好物じゃなくて、ただブームだっただけなのかもって。


それでも私にとっては、甘くて苦い思い出の味ってことに、変わりはない。




「あれ、2人だけなの珍しくね?」

「、…」



現れた春田先輩の姿に、思わず顔を伏せた。


だって、フワリくんの幼馴染。


それを知っただけで、春田先輩のなにかが私の中で変わる。


思ってたよりも、ずっとフワリくんの近くにいる人。


フワリくんの色んなことを知っている人。


今は……そんな人と面と向かってなんて、話せない。



それでもどうにか顔を上げたら、……じっと私を見る、春田先輩がいた。



きっとまた……聞かれる。



「今日も一緒じゃないんだ?」

「、…」

「大ちゃんと」



ほら、……聞かれた。