歩く廊下の雰囲気が、昨日までとは全然違う。
みんなせかせか忙しそうで、体育際に賭ける生徒の思いが伝わってくる。
フワリくん、教室にいるかな…?
それとも、教室以外で作業する係かな。
「あ、あの、雑用係なんですけど、3年生の雑用係って、」
3-2の教室のドアの所にいた先輩に、ヨッコか緊張気味に声を掛けた。
「あー、ちょっと待ってね。佐伯ー、雑用係の1年来てるよー!」
教室の中に向かう声。
その声に紛れて教室の中を見たけど、フワリくんはいなかった。
ホッとしたのと残念なのとで、私の心境は至って複雑……
「やっほー、雑用係の2人?」
「はいっ」
中から歩いてきた人を見て、驚いた。
昨日、フワリくんと一緒に帰っていた人、だ。
ヨッコもそれに気づいたのか、2人して一瞬足が怯んだ。
「ごめんねー、こっちから行こうと思ってたんだけど、ちょっと盛り上がってて」
先輩が親指で指した教室の中は、確かに人が集まり盛り上がっている。
「今ねぇ、旗係の奴が描いた落書き見てたんだけど、もう傑作なのっ」
この人がフワリくんの彼女なのかどうか、私の頭はそればかり。
彼女……だったら、フワリくんの好きな人。
フワリくんは、この人のことが好きなの?
この人は、フワリくんのことが好きなの?
両想い……なの?
どうして付き合うことになったのか、どっちから告白したのか、どれくらいの付き合いなのか……
まだ彼氏彼女って決まった訳でもないのに、頭の中ではもう、決定事項のように2人の姿を想像しては泣きたくなる。