呼ばれた名前に顔を上げて、フラフラしながら歩きだす、けど。


展開に……全然ついていけない。



「2分後に次のお客さん入れるから、それまでに隠れててね」

「ん。」



フワリくんは私が入るまで入口の幕を持ち上げてくれて、お礼を言いながら中へ進んだ。


幕を境に、中は薄暗闇。


今日は全然怖くはないけど……戸惑いから酸素が回らなくて、脳内は本気でフラフラ。


進む廊下で、壁に手を添えながら歩くけど。


どうしたって、フラフラする。


心臓の速度が、どんどん速くなる。



告白をしようって、決意してきた今日。


絶対しようって……失恋記念日を覚悟した今日。


なのに。


私の前を歩く大好きな人の背中が、……私の決意を揺るがす。



終わりたくない。


消したくない。


いざ目の前にすると、そんな想いが強くなる。



なによりも……


きっと言えない。



こんなにドキドキするのに……面と向かってなんて、言えない。


好きすぎて、普通に喋ることだってまともに出来ないのに……


好きですなんて……大好きですなんて……言えるわけ、ない。