ありがとうって伝えたら、きくりんはまた笑ってくれた。


じゃあねって、廊下を歩きだしたきくりんを、見えなくなるまで見送った。



涙が溜まった目は、視界がぼやけて見えづらいから、手首で拭う。



きくりんを好きになれたら、こんなにツライ想いはしなかったのに。


それでも消えないフワリくんへの想いは……もう、伝える以外に道はない。



伝えたらきっと……ちゃんと終われる。



言葉にして、耳で聞いて、



いっぱい泣いて……ちゃんと、



ちゃんと……心からの終わりを、迎えよう。




オレンジ色の夕焼けの中、きくりんとは逆方向に、廊下を走った。


伝えなきゃ終われないなら、……伝える。


伝えたら終われるなら……今、伝える。



終わりは怖いけど、悲しいけど。


1人だけの思い出になるほうが、よっぽど悲しい。



『昔、好きだって言われた子』でいい。


『昔、俺が振った子』でいい。


そんな切ない思い出でも、私の存在が、フワリくんの中に残るなら。


この想いが……ちゃんと記憶に残るなら。



それだけで……いい。