「でも……してもフラれるだけだから、やめた」

「、…」

「もう、フラれたみたいなもん、だけど、…」



きくりんが悲しく笑うから、また涙が止まらない。



「高橋がいつも見てんのは、あの人だけ、だし」

「、…」

「女子たちが教室で騒いでんのも……高橋とあの人のことだろうなって、わかってた」



私は今……きくりんを傷つけている。


私と同じ想いを……させている。



「最初、兄貴のこと好きなんだと思ってたのも……」

「、…」

「勘違いっつーか……大原先輩の隣、いつも兄貴がいたから。気づいた時は、そっちかよって感じで」



きくりんは……優しい。


私に答えを求めないで……笑ってくれる。



いっぱい……優しい。



「……もう、高橋にこういうこと、言わないと思うけど。俺は多分、今日のこと忘れないから」

「…、」

「高橋も、ちょっとした思い出にでも、しといて」

「、、…」

「それだけで、俺はいーや」




同じことを……みんな思うのかな。


好きな人の思い出の中に、いたいって。


叶わないならせめて、思い出の中に残りたいって……



みんな、思うのかな。