全4曲を歌い終えて、バンドは次の人たちと交代。
フワリくんたちが、ステージから下りてくる。
「やー、ご苦労ご苦労!」
あずりん先輩が大声を出すから、フワリくん御一行がゾロゾロと目の前に来た。
だけどフワリくんはこっちを向く訳じゃなく……1人だけ、どこか違うところを見てる。
その視線の先に、愛原さんがいそうで……怖くて確かめられない。
「平井堅いいわー。身に沁みるわー。私の為にありがとう」
「佐伯のためじゃねぇし」
「泣けるわー……」
「だからちげーって」
「雄介は2年の女子のために演奏してたから」
「2年……あー、まだ言ってんの。無理だっつってんのに」
「うっせぇぞまじで……!」
「……。」
「、…」
どこを……そんなにじっと見てるのか。
会話にも参加しないで……なにを見てるのか。
「つーかドラムのくせに誰かの為とか引くわ」
「くせに言うな!」
「誰かのためにって言っていいのは……そうね、ボーカルか、せいぜいギターまでだね」
「そんなもんお前、ボーカルはちゃんと相手いるし」
「ほう?誰のために歌ったの、すぐるくん」
「……。」
「、…」
やだ。
絶対……絶対言わないで。
言わないで、……お願いだから。


