「駅っていっても田舎の駅だから小さくて、その駅を使う生徒は学校問わずみんな顔見知りになったの」

「……」

「太一くんっていうんだけどね、友達から『太一くん今駅にいる!』って連絡くる度、学校から駅まで超ダッシュ。風の日も雨の日も雪の日も。でもトイレで鏡チェックしてる間に太一くんの電車が来て、すれ違って会えなかったり。すっごく好きで、大好きで。太一くん太一くんって、毎日が太一くん一色だった」



先生の青春時代の話は、すごく不思議。


今は大人で勉強を教えてくれる先生が、私たちみたいに恋をしてたって……やっぱり想像できないから。



「顔見知りになって友達になって……みんなで遊んだりもしたな。高校の3年間、ずーっと大好きだった。今振り返っても、あれが人生最大の恋だったなーって言えるくらい。結局フラれちゃったけどね」

「3年間も、好きだったの?」

「そう、一途なのよ、私」



林先生は笑って、人生最大の恋の話をしてくれる。


笑えているのは……時間が経って、思い出に変わったから?