ドアを開けて外に出たら、それだけですごい濡れた。


降ってくる雨をわざといっぱい浴びて、雨のせいって誤魔化しきれない涙を拭う。



「おーい、停電でインターホン使えないから、親御さん呼んできてー」

「、…」



もりりんのほうに向かう足は、やっとフワリくんから離れていく。


本当は……


濡れた髪も、肩も、手も、足も、心も、……全部がまだ、車の中に向かってる。


本当は……離れたくないって、終わらせたくないって……言ってる。


でも頭の中だけは、一生懸命……離れたい、離れたいって、言い聞かせていて。


だって言い聞かせないと……一生、忘れられない。


一生……終われない。



「……呼んでくる、」

「おー、悪いな」



家に入ったら家族が集まってきて、私が無事だったことに安堵している。


もりりんが来てることを伝えると、両親が玄関に向かった。


遅くなったことと連絡ができなかったことを謝罪するもりりんは、言葉遣いや態度が、いつも私が見ている姿とは全然違った。


ちゃんとした大人。


ちゃんとした教師。


そんな風に見える。


私もいつか大人になったら……


ちゃんと忘れて、ちゃんと前を向いて、この恋をいい思い出だったって言えてるのかな。


今の私は、どうしたって玄関の向こうの……車のライトが光る場所が気になっちゃうけど。


いつか大人になったとき、いい思い出って笑えてたら……


それがきっと、フワリくんを好きになってよかったって思える、唯一の未来。