「そういやお前ら、親にちゃんと連絡してある?」

「あ、…」



怖くてそれどころじゃなくて、すっかり忘れていた。



「お前、女子なんだから心配してんだろ。早く連絡しろ」

「は、ハイ、」



すぐに鞄からスマホを出すと、すごい数の着信履歴。


授業中からずっと音を消したままだったから、全然気づかなかった。


でもそうだよね……停電になったうえにこんな時間まで帰らなかったら、心配して当然だよね。


走り出した車の中で、今から帰るってメッセージを送った。


車なら、3分もかからないですぐ家だから。


もうすぐ……フワリくんとお別れ。


やっと、1人で泣ける。



「高橋んちこっちでいんだっけ?」

「うん、あってる」



フワリくんは……車に乗ってから、一言も喋らない。


私の気持ちに気づいて……気まずいの、かな。



窓の外は……外灯が消えていて暗い。


走る車たちのライトだけが唯一の灯りで……いつもよりみんな、大分ゆっくりと走ってる。


帰っても、まだ電気は点いてないから、きっと真っ暗だけど。


それでも絶対、家は学校より怖くない。


だから、1人で思いっきり泣ける自分の部屋に、早く行きたい。



あの日……フワリくんの自転車の後ろに乗って、一緒に帰った道。


今は車に乗って、また……一緒に帰ってる。


進むスピードも、見える景色の色も、感じる温もりも、あのときとは全然違う。


本格的な恋の終わりを感じながら……同じ道を、一緒に帰ってる。