「つーかもりりん、来んの遅い。」
「あのなぁ、停電の中見回りすんの、結構大変なんだからな」
「…、」
暗闇の中、もう片っぽの手は……繋いだまま。
フワリくんが、立ちあがらせてくれる。
「よし、帰んぞー」
もりりんの持っている懐中電灯は、スマホの光よりよっぽど明るい。
それでもまだ暗いけど、さっきまでの光に比べたら……周りがよく見える。
だけどそれが、逆に怖い。
だって……
お化け屋敷を作ろうとしている5階には……変な人形とか、変な鏡とか……変な張り紙がいっぱいで。
暗闇の中、怖いものがたくさん見える……。
「暗いから気をつけろよー」
「、…」
先頭を歩くもりりんに、黙って着いて行くフワリくん。
フワリくんに手を繋いでもらったまま、怖くて、俯きながら私も歩く。
自分たちの足音すらも怖いのに……顔なんて、絶対上げられない。
座ってたときは落ち着いてたのに……歩きだすと、肝試しみたいで怖い。
「つーかお前ら、よくあんなとこにいれたな。怖くなかったのか?」
「……。」
「、…」
なに、が……
やめてよ……怖い話とか。
「あー、お前ら、なんも見えない側の人間?」
「……。」
「、、、、…」
やめ、、、
「俺なら絶対この階は無理だわ」
「もりりん、」
「見えるのには慣れたけど、ここはさすがにちょっと、」
「もりりん、!」
「、、、…」
繋いでくれている右手が……また、ぎゅーって握られた。


