「あ、……そこ、デス、」
「……ん。」
ホームセンターを超えて、十字路の角。
いつも見ている風景にフワリくんがいることが、すごく不思議。
だけどなんだか、嬉しい。
「とう、ちゃく。」
家の前でブレーキがかかって、自転車は止まった。
新しくも古くもない私の家を、止まったフワリくんは見上げてる。
恥ずかしいから、あんまり見ないでほしいんだけどな……
自転車から降りると、少し、フラフラした。
フワリくんは自転車に乗ったまま、片足立ちで、私を見る。
「、大丈夫?」
「ハイ、…………あの、」
「…ん?」
早くお礼を言わなきゃって、……思うのに。
言葉を口にするのはいつも、想像よりもうんと難しい。
「ぇ、と……、」
「う、ん?」
「……わざわざ……スミマセン、デシタ、」
『ありがとうございます』を言いたかったのに、出てきた言葉は『スミマセン』。
お礼を告げるより謝るほうが簡単なのは……どうしてだろう。