駐輪場から自転車を出して、安定した道の上でフワリくんは自転車にまたがった。
「、乗って」
「、…」
「ななちゃん。」
乗ってって、……多分笑ってくれたから。
後ろに、乗った。
「お、……重い、デス、……スミマセン」
乗ったものの、どこを掴んでいいのか分からない。
「掴んで、危ないから。」
「、、、…」
どこを……。
私はどこを、掴めばいいの。
「どこでも、いーから、」
「…、」
前を向いたまま、フワリくんが笑う。
どうしようって考えて、フワリくんの肩に、手を置いた。
触れた肩から、全身に緊張が走る。
もう……もう……、
勝手に掴んで、勝手に緊張して……私、変態かも。
「、行くよ。」
「ハイ、」
ゆっくりと……静かに、自転車は走り出す。
風に乗るように、空気を切るように。
速度が少し上がって感じる風は、秋の、少しだけ涼しい風。
通り抜けていく風が。
車が。
人が。
全部全部、夢みたい。
目の前で揺れている、大原先輩の髪の毛も。
肩に置いた手も。
夜の景色も。
全部が……夢の中の出来事みたい。
好き。
何度も何度も唱えた。
違う、……唱えたんじゃなくて、勝手に、溢れ出す。
好きです。
大好きです。
声に出さなくても伝わる力が、あればいいのに。
それならきっと私の想いは、なんの道草もなくまっすぐ届くのに。
大好きって。
今すぐ……届くのに。


