「……なんか……緊張するね」

「うん……」



久しぶりに向かう3年生の教室は、ものすごく行きづらい。


ううん、行きづらいを通り越して、行くのが怖い。


だって用事ないし……体育祭が終わった今は、3年生の階なんて足を踏み入れてはいけない領域みたいなものだもん。


そんな気持ちはヨッコも同じなのか……階段途中で、私たちの足は怖気づいて止まってしまった。



「どう、する……?」

「これは結構……厳しいね」



会いたいけど……会いたい想いの分だけ緊張がものすごい。


どうしよう、今からこんなにバクバクで。


本人目の前にしたら……死ぬ、かも。



「や、っぱ……無理、……」

「うん、私も……」

「用事とか、ないし、」

「だよね……」



やっぱり無理だねって、教室に戻ろうとしたとき。


ポケットのスマホが震えた。



「ん……?ライン」

「あ、私も」

「あずりん先輩から、だ、」



雑用係のグループラインに送られてきたメッセージは……



『暇なとき、3-2に来ておくれ♡』



あずりん先輩からの、メッセージ。


私とヨッコは、同時に顔を見合わせた。



「今……暇、だよ、ね?」

「うん……確実に」



てことは。


今!



「行こう、!」

「うん!」



あんなに動かなかった足が、階段を一気に駆け上がる。


行ってもいい用事が出来るだけで、怖かった3年生の教室だって怖くない。


あずりん先輩が呼んでる。


どんな用事だとしても、行かないわけにはいかないから。


だってあずりん先輩が、呼んでるんだもん!