「佐伯といい大ちゃんといいよー、どんだけななちゃん贔屓だよ」

「いや、ヤマもだろ」

「俺はななちゃんだけじゃなく、可愛い後輩はみんな贔屓なの」

「サイテーか!まぁでも確かに、高橋さん後輩の鏡って感じだもんね」

「、…」



後輩の鏡……。


フワリくんにとっても、私はただの、可愛い後輩。


ポジティブな女子から言わせたら、可愛いがつくだけいいじゃん!って、言われそうだけど……


可愛い後輩なんて……所詮はただの、後輩。


話しかけてくれるのも、熱中症を心配してくれるのも、全部、後輩だから。


深い意味なんて、なにもない……



「先輩に可愛がられるとか、高橋さんそれだけで人生得してるね」

「目ぇつけられる佐伯とは大違いだもんな」

「、…」



可愛がってくれるのは嬉しい……けど。


ただの後輩って突き付けられた現実は、今の私にはダブルパンチで痛すぎる。




結局この日、あずりん先輩とフワリくんが話すところは全然見ないまま、体育祭1日目が終わった。


見る限りでの2人の様子は、付き合ってる、って感じではなかったけど……


保留、ってこともあるだろうし……


私の胸の中は全然晴れないまま、夕方の空の下、俯きながら家に帰った。




お風呂の中で思い出す、1日の出来事。


隣に座ったこと、ポカリを貰ったこと、騎馬戦がかっこよかったこと、あずりん先輩が呼びだされて、スー先輩たちと泣いたこと。


かっこいいフワリくんとあずりん先輩を呼びだすフワリくんを、交互に思い出しては浮き沈み……


しまいには可愛い後輩ってフレーズに、湯船に潜って暴れたりした。



明日は……せめて泣くようなこと、ないといいな。