フワリくんの隣に座って、ハンカチで手を拭いた。

そんなに飛び出たわけじゃないから、これでもう大丈夫って思ったけど。



「ここも、零れてる。」



フワリくんが見つけたのは、Tシャツの裾。


『貸して。』って私からハンカチを借りると、それを使って裾を拭いてくれる。



「ん……これ、セクハ、ラ……?」

「ぇ、…」



聞かれた声に顔を上げたら、フワリくんの目線の真ん前で……



「「……!」」



今までにない至近距離で合った目に、途端に体が熱くなる。



「ゴ、ゴメ、…」

「イエ、、スミマセ、…」



パッと離れた体が、ものすごく熱い。


信じられないくらい熱い。


フワリくん、至近距離だとハンパない。



心臓の音、ハンパない……



「…やっぱ、そろそろ、戻ろ、っか。」

「デス、ネ…」



気恥ずかしくて、フワリくんのほうなんて見られないまま立ち上がる。


会話らしい会話もないまま渡り廊下に出て、購買を通り過ぎたあとは2階まで上った。



「じゃあ、衣装、がんばって、ね。」

「ハイ、…」



最後にそれだけを言って、フワリくんは3年生の教室へ上がっていく。


後ろ姿なら、って……離れていく背中を見送っていたら、



「、…」


「……」




階段の途中で、フワリくんが振り向いて……


ふはって笑って、また階段を上がっていった。



「、…」



……体育祭、



ずっと始まらなければいいのに。