しゃがんだまま見上げた先には、フワリくんと谷ぽんの友達のあの子……
『あの子』は、私たちとは違うオレンジ色のチームTシャツを着ている。
「やっぱり、ななちゃんだ。」
「、…」
「Tシャツ、おんなじだし。」
フワリくんに声を掛けられた私の前で、あの子はなんとなく、不機嫌な顔……
邪魔しないでよって、顔。
邪魔したわけじゃないんだけどな……私、見つからないようにって思ってたし。
「大ちゃん先輩、早く行こ~?」
あの子が、早く早くとフワリくんの腕を引っ張り急かしている。
学食に、行くのかな……
「ん。ななちゃん、じゃあ、ね。」
「、…ハイ」
あの子と並んで、フワリくんが歩きだす。
学食に向かって、渡り廊下を歩いていく。
フワリくんを初めて見た、一目惚れをしたあの場所を、フワリくんが……
違う女の子と……
「っ、お、…おはら、先輩、!」
声は……別に、そこまで大きくはなかったと思う。
絶対に聞こえる声を出す勇気は、やっぱり私にはなかったから。
だけどフワリくんは、振り向いてくれた。
あの子には聞こえなかったのか、フワリくんが立ち止まったことに気づいて振り返った。
イチゴミルクをギュッとして。
呼びかけたくせして怖くなって視線を外す……


