「…バーベキュー、できると、いいね。」
「ハイ…」
「もう、今週、か。体育祭。」
体育祭は、今週末。
もう、フワリくんとこんな風に過ごせる時間は、終わる。
3年生の教室に行くことも、一緒に準備をすることも、なくなるんだ……
「あ、あずさんとこ、勝った。」
「、…」
好きな人が好きな人を見ているところも、見なくて済む。
遠いのに、見えにくいのに、勝ったなんて、すぐにわかっちゃうくらいに見てるところも。
全部全部、見なくて済むんだ……
「片づけ、手伝え、って。」
「え、?」
フワリくんの視線の先を辿ると、たった今試合を終えたばかりのあずりん先輩が、ネットの片づけを手伝えって私たちを見て訴えている。
「疲れ知らず。」
「、…」
フワリくんが立ち上がるから、私も立ち上がる。
いつもの白いシャツじゃない、緑のジャージの背中を見ながら、ついて行く。
「ななちゃん、次フットサルでしょ?俺らで片しとくし、いいよ?」
「イエ、手伝い、ます……」
もうすぐ終わってしまう体育祭。
少しでも長く、一緒にいたい。
前を進んでいたフワリくんは、いつの間にか隣を歩いてくれている。
いつだってそうだった。
二人で歩く時は必ず背中を見ていた私だけど、気づいたらフワリくんはいつも隣にいてくれた。
そんなフワリくんの優しさが、私の恋を、大きくした……


