「じゃあ今、ひま?」
「ぇ、」
「あっち、ヤマの卓球」
「ぅ、ぇ、?」
立ち上がるフワリくんが、私の手首を掴んで連れて行こうとする。
その行動に、周りの友達たちも気づいて振り返り……
「え!?フワ……大原先輩いつの間に!?」
私を含め、そこにいる全員が軽いパニック状態。
手首を掴んだまま、フワリくんは女子たちに視線を移した。
「ななちゃん、ちょっと、借りてい?」
「「「………。」」」
黙り込む女子数名と、返事を待つフワリくんの間に、無言の数秒。
「ど、どーぞどーぞ!好きなだけどーぞ!」
「むしろ返さなくてもいいくらいどーぞ!」
余計なことを口走る友達たちに、フワリくんはふにゃっと笑った。
「じゃ、あっち、行こ?」
「…、」
手首を引かれるまま、私は立ち上がる。
なにがなんだかさっぱり分からない状況の中、連れられて行くのは卓球が練習試合をしている方向。
だけど近くで応援するんじゃなくて、結構遠い壁際にフワリくんは座った。
「座んないの?」
「あ、座り、マス」
隣に座って、膝を抱えた。
まるでさっきのヨッコと菊地先輩みたいに、2人だけ、ポツンとしてる。
なに……これ。
この場所、卓球もバレーもよく見えない、けど……


