「すぐるー、遅い!」
後ろから聞こえたあずりん先輩の声に、フワリくんが私の横を通り過ぎる。
目が合ったのに、なんにも言わず、通り過ぎる……
私は涙をぐっと堪えて……歩きだした。
「お、高橋さんありがとー」
「いえ……」
「ついでにさ、卓球のラケット入った箱も持ってきてもらえる?」
「はい、…」
バレーのポールを床に刺す雄介先輩に頼まれて、もう一度用具室に引き返す。
早くあの中からフワリくんが出てきてくれないと、また鉢合わせてしまう。
歩く一歩がひたすら重い。
体が重力に負けてしまいそう。
神様お願い、
もうこれ以上、なにも起こさないでください……


