着いた3-2の教室では、旗係の男子たちと、それを手伝っている菊地兄弟がいる。
その他にもポツポツと3年生がいて、その中の誰かが朝倉先輩。
捜し回ったその先輩がどの人なのか、分からないからフワリくんを見た。
けど……
「あ、高橋」
床に座り込む旗係の中から、立ち上がったのは菊地弟。
呼ばれた名前に視線を向けたら、菊地弟は私の元へやって来た。
「高橋、へーき?」
「え、なにが、」
「なにがって、ほら、昼休み……なんか様子変だったから」
隣にいたフワリくんが、スッとどこかへ歩き出す。
窓際にいる男子3人組のほう。
あの中に、朝倉先輩がいるのかな……
「俺さ、てっきり高橋は兄貴のこと……ほら、勘違いしてて。なんか悪かったなって」
「……」
菊地弟の言葉を聞きながら、私の目はどうしたってフワリくんを追い掛けちゃう。
白いシャツが、どんどん私から離れて行く。
すぐ隣を歩いていたのが、一瞬でまた、夢のよう。
「ほんとごめんな」
「あ、ううん……大丈夫」
フワリくんが、大柄な男の先輩と話している。
あの人が朝倉先輩、かな。
「あっれー、なに、きくりん、高橋さんとどういう関係?」
教室に入って来た雄介先輩が、すかさず私たちに寄りついた。
菊地弟はきくりん……って、呼ばれてるんだ。
同じ菊地が2人で、ややこしいもんね。
「や、……ただのクラスメイト、っすよ」
フワリくんが、大柄な先輩との話を終えて、こっちに戻って来る。
数歩歩きだして合った目を……お互い逸らすことなく、向かってくる。
だけど。
「きくりん、顔、赤!」
「え、ちょ、やめてくださいよ、」
「……」
目の前まで来る前に、フワリくんの足は……止まってしまった。


